「クルマのUVカットガラスって、実は完全じゃないんですよ」と、とあるガラスメーカーの方に平然と言われ、心の中でギョエ~! ものすごくショックを受けたことを、いまでも思い出します。本当に驚くと、言葉って出なくなるものなんですよね。いやはや、もうずいぶんと前のことですけれど。

 そのお話を聞くまで「日焼け止めって塗るのが本当に面倒。でも、クルマの中に入っちゃえば日焼け対策は万全だから~」くらいに思っていたのですが「実はUVカット率ってメーカーによって測定方法がさまざまなんです。とあるメーカーが90%と言っていても、他のメーカーの測り方だと80%に到達するかどうか、中には70%くらいのものもあるんですよね~」なんてサラリと言われ、さらにガビ~ン。それじゃ、いままで全然日焼けしちゃってるじゃん…。

 その結果は、そのお話を伺ってから15年後、しっかりと私の右手に表れました。左手に比べて右手の方が、一目瞭然にシミが多いのであります(涙)。私の場合、圧倒的に右ハンドル車を運転することが多いので、こういう結果になったのでしょう。
もちろん、一応日焼け止めクリームを塗ったりもしてましたけど、手ってちょこちょこ洗うじゃないですか。そのたびに日焼け止めを塗り直すほどマメな性分ではないので、右手の甲はかなり無残なことになっちゃったんですよね。あ~あ~。時を巻き戻したい~っ。

 その際に「今度新しくUVカット率が、限りなく100%に近いガラスが出るんですよ。そのガラスの名前というか、キャッチコピー的なものを考えたいのですが、何か案はないですかね?」と聞かれたワタクシ。そういうの、もっと早く出してほしかったヨ、なんて思いながらも「一般的に日焼けの数値というと、SPFがいちばん有名だと思うので、SPF15000とかにしたら、すごく響くと思いますよ~」なんてお答えしたのを、いまでも覚えています。

 無論、SPFは現在に至っても50+以上の表記はないので、15000というのが採用されることはありませんでしたが、そのたまたま言った15000という数字は、実際そのガラスをSPF値で換算するとそれくらいに相当するものだと言われ、何かに当選したような気分で、ちょっと嬉しかったりもしたりして。
しかし、そんな数値なら本当に焼けないに違いないけど、なんでもっと早く出してくれなかったんだ…。もう手遅れじゃないか…。せめてこれまでのUVカットガラスは100%カットじゃないことを警告してほしかった…云々。UVカットガラスに関する自分の常識を真っ向から翻されたショック。こういうのって、意外としばらく立ち直れないものだということも知りました。ちなみにその後、そのガラスはUVカット率99%以上を誇るスーパーUVカットガラスとして登場しましたが、特段キャッチコピーはなかったような気がします…。

 さて、ちょうどその頃からでしょうか。「家の中に居ても、窓ガラスの傍にいると日焼けします」とか「紫外線は実は春~初夏がいちばん強いんです」とか「冬だって紫外線はないわけではありません」とか。日焼けに関する意識が世間一般に高まってきました。

 さらに、赤外線(IR)なんていう言葉も普通に耳にするようになりました。「物質の中にまで届いて、その分子を震わせることで熱を発生させるのは赤外線である。従って、ジリジリと熱を感じるのは、紫外線ではなく赤外線の仕業だ…」なんていうことも勉強しました。ジリジリカットファンデーションなんていう化粧品が出てきたのもその頃でしたね(いまではすっかり見かけなくなりましたけど、どこへ行ったんでしょう?!)。

 その後、クルマのガラスに関してはUV&IRカットガラスという画期的な商品が出てきまして、現在「忙しい朝はとりあえずクルマの中に逃げ込めば日焼け対策は万全だ」という時代になったのは、とてもありがたいことですよね。さらにさらに、ルーフガラスなどは色が瞬時に代わったりするものも出てきましたし、クルマの中にクリスタルガラスのアイテムが使われることも増えてきました。見た目も効能もまだまだ進化しそうなガラスは、ワクワクするアイテムのひとつだと思っています。

竹岡 圭(たけおか けい)

竹岡圭モータージャーナリスト☆タレント
ドキドキワクワクのクルマ選びから愉しさ満喫のカーライフまで、あれこれ広い範囲のクルマ関係のサポーターとして活動。TVやラジオやYouTubeやイベントで喋るという柔らかいところから、官公庁の会議といった硬いところまで守備範囲とするが、いちばん得意なのはなんでも楽しむこと。「クルマは楽しくなくっちゃね!」をモットーとし、モータースポーツにも長年携わり、レースやラリーにもドライバーとして参戦中。日本自動車ジャーナリスト協会副会長、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員も務める。